こんにちは!ピアノ・作曲講師の佐藤 良彦です。
先日、音楽仲間と「デジタルと音楽の意外な関係」についておしゃべりしていたとき、とんでもなく面白い妄想(仮説)にたどり着いたのでシェアします。
「ゲーム」と「音楽」。一見まったく違う世界ですが、実は「人間の五感をどう心地よく騙すか」という共通のテーマで、深く深くつながっていました。
「65536」という、ゲーム機を支える魔法の数字
みなさんは、「65536」という数字にピンときますか?
実はこれ、任天堂の「スーパーファミコン」などのゲーム機や、プログラミングの世界では超・有名な数字なんです。数学でいうと「2の16乗(2を16回かけた数)」にあたります。
昔のゲーム機(16ビット機と呼ばれた世代)は、この「65536通り」の組み合わせを使って、画面に映るキャラクターの動きを計算したり、最大65536色の豊かな色彩を表現して、当時の子どもたち(今のパパ・ママ世代ですね!)をワクワクさせていました。
ゲーム機が進化する基準となった、まさに「九九」のような超基本の数字です。
しかし、音楽家である私がこの数字を聞いて真っ先に連想したのは、ゲームではなく「音符の細かさ」や「電子楽器(MIDI規格)」のことでした。
「全音符を65536分割した、16384分音符なんてあるのかな?」
「そういえば、電子ピアノやシンセサイザーの『ピッチベンド(音高を滑らかに変えるホイール)』って、なんであんなに動きが細分化されているんだろう?」
実は、この疑問こそが今回の妄想の入り口でした。
なぜ電子楽器のセンサーは「過剰」なのか?
電子楽器の規格(MIDI)が作られたとき、通常のコントロール(音量など)は128段階(7ビット=2を7回かける)で処理されることになりました。
しかし、人間の耳は「音程(ピッチ)のズレ」には恐ろしいほど敏感です。もし音程の変化を128段階くらいで大雑把に処理してしまうと、音が滑らかにつながらず、デジタル特有の「カクカク感」が耳についてしまいます。
だからこそ、音程を滑らかに変えるセンサーだけは、どんなに耳が良い人が聞いても絶対にバレない「16,384段階(14ビット)」という、桁違いの超高解像度が与えられたのです。
ここで、ひとつの面白い仮説が浮かびました。
「もし人類がまったく違う進化を遂げていて、音高(ピッチ)には超鈍感だけど、音の強さ(ダイナミクス)には超過敏だったら?」
ベートーヴェンが書いた「デジタル仕様の楽譜」
もし人類がそういう進化を遂げていたら、現代の電子楽器の歴史はひっくり返り、音量やタッチのセンサーの方に16384段階の超高度センサーがついていたはずです。
そして、歴史上の偉大な作曲家、たとえばベートーヴェンなら、当時のピアノの限界に常に怒り、新しいテクノロジーを誰よりも渇望した「超こだわり派」ですから、楽譜の表現をこんな風にアップデートしていたに違いありません。
💻 14ビット仕様のダイナミクス・コード
F8192:音量の限界(最大マックスのフォルテ)0:基準となる音量P8192:消え入るような音量の限界(最小ミニマムのピアノ)
現代の楽譜にある p(ピアノ) や f(フォルテ) といった曖昧な記号は使わず、コンピューターのプログラムのように、厳密な数値で指示を出していたでしょう。
超絶リアルなクレッシェンド
P4096───(4小節かけて)───→F8192
(※演奏家はコンマ数パーセントの音量ズレも許されず、ベートーヴェンと血みどろの喧嘩を繰り広げることになります)
さらにドラマチックになる難聴の悲劇
現実のベートーヴェンは後半生に耳が聞こえなくなりましたが、この世界線なら「音が聞こえなくなる」のではなく、「ほんのわずかな音量差で鼓膜が激痛に襲われる(超・聴覚過敏症)」に悩まされていたかもしれません。現実の音を恐れながら、頭の中で完璧な数値(コード)を組み立てて『第九』を生み出す……そんな、さらにストイックなドラマがあったかもしれません。
おわりに:エンタメの本質は「有限の中で五感を揺さぶること」
- ゲーム機:限られたデータ(65536色など)の中で、いかに美しい世界を表現するか。
- 電子楽器:人間の耳にバレないように、音程を16384段階に細かく刻んで滑らかさを表現するか。
アプローチは違っても、どちらも「限られたデジタルの世界で、いかに人間の五感を揺さぶり、楽しませるか」という目的は全く同じです。
もしゲーム会社のプログラマー面接で「65536とは?」と聞かれたら、ただ「16ビットの計算限界です」と答えるだけでなく、「もし人類の進化が違ったら、ベートーヴェンは F8192 と書いていたはずです。私はそんな風に、人間の五感にアプローチするプログラムが書きたいです」なんて語れたら、きっと素敵ですよね。
デジタルな数字の裏側にある、人間らしい「こだわり」のお話でした。
今の時代、ゲームやYouTubeなどデジタルなエンタメが溢れていますが、だからこそ「自分の指先ひとつで、何段階もの繊細な強弱(ダイナミクス)を表現する」というアナログなピアノの体験は、お子様の豊かな感性を育てる素晴らしいツールになります。
「うちの子、音楽が好きかも?」「集中力を身につけさせたいな」と思われたら、ぜひ一度教室へ遊びにいらしてください。
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