
秋風が心地よく、空が高く澄み渡る10月11日。コープの小川駅前店も華やかにオープンし、かなりの人でにぎわっていました。今日のレッスン室も、それぞれの課題と向き合う生徒たちの熱気と、音楽を楽しむ笑顔で満たされていました。一音一音に込められた悩みや発見、そして音の表情がパッと澄み渡る瞬間。そんな今日のレッスンでの出来事を綴ります。
◆ ハーヴィー君
ドビュッシーの曲の仕上げから、新しいニ短調のレパートリーへ。3ページ目に入り、指使いやリズムが少し複雑になってくる場面でした。薬指と中指の交差や指のくぐらせ方で指先が一瞬迷い、鍵盤の上で動きが止まってしまうハーヴィー君。鍵盤を見つめる瞳に、少しだけ焦りの色が浮かびます。 「ここは指を強引に飛ばすんじゃなくて、2番と4番の指をそっと置くイメージで繋いでごらん。1、2、3、4…」と一緒にゆっくりカウントを数えながら、指のポジションを整理していきました。 すると、突っかかっていた旋律が滑らかに繋がり、音の途切れがなくなっていきました。音色がじんわりと豊かに広がっていくのが分かります。毎週忙しい中で休まず練習を重ねてくる姿勢、本当に立派です。次回は両手での仕上がりが楽しみですね。
◆ ピース君
部活のバレーボールや修学旅行、そして勉強合宿と忙しい日々を送る中学3年生のピース君。今日は装飾音(ラソラシ)が入る速いフレーズで、どうしても手が力んでしまい、装飾音がつぶれてリズムが走ってしまうところで苦戦していました。「早く弾かなきゃ」という気持ちが前傾姿勢の音に出てしまっている様子。 「焦って音を押し込もうとしなくて大丈夫だよ。最初の音は一瞬でフワッと抜いて、主音に優しく流し込むようにしてみてね」と、ペダルを踏むタイミングと右手のリズムの抜き方をアドバイスしました。 アドバイスの後、鍵盤に置かれた手の力がスッと抜け、硬かった装飾音がまるで水滴が弾けるような美しいキラめきへと変化しました。左手の伴奏も右手を邪魔せず、心地よい拍感を支えてくれましたね。ハードな日程の中でもしっかりピアノに向き合う根性に拍手です。
◆メイちゃん
「のんびりカウボーイ」とリズム課題に取り組んだメイちゃん。左手でグーとパーの動きを交互に作るリズムで、ついつい右手が手につられてしまい、どちらの手がグーでどちらがパーか分からなくなってクスクス笑ってしまう場面がありました。 「カウボーイは、アメリカの大きな空の下で、牛を追いながらのんびり馬に揺られているんだよ。急がなくていいんだよ」と曲の情景を話し、一緒に手拍子とグー・パーの動作を体で確認しました。 イメージが湧いたメイちゃんの手つきから硬さが消え、ゆったりと馬が歩くような、陽気で温かみのある音が部屋に響き渡りました。グー・パーの打ち上げも無事に大成功!表現力がどんどん豊かになっていて、次の曲も楽しみです。
◆ ナディアちゃん
「元気いっぱい さかだち」と「シニア2」のテキストに挑戦した小学3年生のナディアちゃん。曲の中で世界がひっくり返るようなさかだちの動きを表現する時、右手と左手の交差に戸惑い、最後の決めポーズの音で勢い余ってバランスを崩しそうになっていました。チャーミングな口数で照れ隠しをしつつも、手元に集中する真剣な眼差し。 「さかだちも、最後にピタッと着地が決まるとすごくかっこいいよね。最後の音に向かって手首の回転を少し緩めて、体の軸を感じてごらん」と声をかけました。 呼吸を整えて弾き直したナディアちゃん。最後の和音がパシッと見事に決まり、まるで本当にきれいな逆立ちが決まったかのような爽快な音が響きました。無事に「プチレパ」も合格!ユーモアたっぷりのナディアちゃんらしい、生き生きとした演奏でした。
◆ ルナちゃん(60分)
学年の合唱オーディションで見事「大地讃頌」の伴奏者に選ばれたルナちゃん!本当におめでとう。
受験勉強の疲れも重なり、どこか表情に固さが見えます。和音の骨組み(シミレドなど)だけを抽出して色彩の変化を感じるアプローチを行いました。「特にここはルナちゃんのソロパート。合唱を支えるだけじゃなく、自分の言葉として情緒豊かに思い切って歌していいんだよ」と伝えました。 すると、機械的だった拍感が息を吹き返したように躍動し、ピアノソロのフレーズでは息をのむほど深く豊かな響きが広がりました。大地讃頌では和音の切り替えでペダルのふみかえで、響きの空白部分ができる事に頭を悩ませていました。これには「まず左手とペダルのみでゆっくり弾きこんで、その後テンポを上げていくんだよ、という」声掛けで、ばっちり解決しました。オーディション前のレッスンで大分完成に近づいていたので、あとは各パートのメロディーを歌いながら弾けるくらいまでにブラッシュアップだね!
クラス合唱の「IN TERRA PAX」もじっくり取り組みました。終結部の32分音符では音楽の先生が聴くレベルでは正確なリズムではないため、メトロノームを使って8分の裏拍で156を目標に弾く(=付点4分なら52のテンポ感)という課題を決めました。この課題をスローテンポから取り組むわけですが、やった後と前では格段にテンポへの指の追従が上がりました!受験勉強と重なる大変な時期ですが、ルナちゃんの奏でる音がクラス全体を引っ張っていく未来が見えるようです。
◆キース君
「大地讃頌」の本番まであと11日と迫ったキース君。ピアノソロの場面と、全員で最高潮に盛り上がるサビの部分で「急に指が走って止まりそうになる」という強い不安を抱えていました。焦りから指先の運動(筋肉の動き)だけで弾こうとしてしまい、小指の旋律(ドパレシ)が抜けて親指ばかりが強く響いてしまう状態に。「鍵盤を運動として叩くのではなく、和音の響きと歌詞の感情を身体に染み込ませよう。『恩寵の豊かな…』と歌詞を口にしながら、和音の色彩を感じてみて」と助言し、歌詞に対してもこの歌詞が聴こえてきたらこの和音を弾きたいと思えるレベルまで弾きこむという提案をしました。旋律とバスの骨組みを丁寧に捉え直しました。 自分の出している音と和音の響きに耳を澄ませた瞬間、硬く強張っていた指先がすっと鍵盤になじみ、小指の歌う美しい旋律がバスの豊かな響きに乗って立ち上りました。不安そうだった表情が和らぎ、自信に満ちた音へと一変。11月の受験休会前に、最高の演奏をホールで響かせてくれることを確信しています。
◆ テディ君(音大受験)
音大受験に向けて、ハノンのスケール、バッハのインヴェンション第13番、新曲視唱、そして聴音とフルコースで取り組むテディ君。ハノンでの指の離し際のバラつきや、視唱・聴音で跳躍(2度音程やオクターブ)が出てきた時に、音程の軸を見失って迷子になってしまう場面がありました。自分の演奏を客観的に見つめ直そうとするあまり、体に力みが入ってしまっています。 「音を当てることだけに囚われず、常に調性の中心音を感じて、そこからの距離感を耳で捉えよう。指離しも左右均等にリラックスして」とアドバイス。視唱でも、隣の音との比較ではなく調性の響きの中に声を置くよう導きました。 アドバイスを受けて息を深く吸い込み、声を放つと、迷いのあった視唱のピッチがピタリと安定し、芯のある美しい声が響きました。それに伴い、聴音の書き取り精度も格段にアップ。鍵盤上のスケールも粒が揃い、澄んだ音色へと磨かれました。大人としての観察眼と真摯な努力が実を結んできています。
【おわりに🎵】 今日のレッスンでも、生徒一人ひとりが自分の課題と向き合い、小さな気づきから大きな変化を生み出していく感動的な瞬間に立ち会うことができました。壁にぶつかった時の戸惑いも、音が解き放たれた瞬間の輝きも、すべてが大切な成長のドラマです。 来週も、みんなが音楽を通して自分らしい響きを見つけられるよう、温かく寄り添っていきたいと思います。
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